2022年3月3日(木)、石川県加賀市で「痛み体操研修」の実施のお手伝いをしました。
「痛みを手放し、自分らしく動ける体を取り戻す」。 石川県加賀市が推進するスマートシティ構想の一環として、私は「痛み体操」の効果を検証する実証実験のサポートおよび研修講師として参加しました。
デジタル技術の導入だけでなく、いかにして「運動」というアナログな行動を住民の皆さんに定着させるか。専門知と現場を繋ぐファシリテーションの最前線をご報告します。

背景:加賀市が目指す「予防医療」のDX
超高齢社会において、腰痛や膝痛などの「慢性的な痛み」は、QOL(生活の質)を著しく低下させ、介護リスクを高める要因となります。
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課題: 適切な運動療法(痛み体操)が知られていても、それを正しく継続し、データを収集・分析する仕組みが地域に不足している。
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実証実験の狙い: ICTや専門的な研修を通じて、住民自らが痛みをコントロールできる「自立型ヘルスケア」のモデルを構築すること。
今回のアプローチ:理論を「動ける自信」に変える
この研修は静岡大学ケア情報学研究所と加賀市の共同研究の一環として行われました。研修では慢性疼痛(まんせいとうつう)と呼ばれる、通常の痛みとは異なる原因のはっきりせず長期間にわたる痛みという新しい概念について説明がありました。そして、痛みを和らげる方法として筋肉を動かすストレッチなどを行いました。
実証実験では、実施前後にアンケートを実施し、その変化を比較します。
私は本実証実験において、参加者やスタッフへの「痛み体操研修」を担当し、以下のポイントでサポートを行いました。
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「納得感」を生む教育デザイン: 単に動きを教えるのではなく、なぜこの動きが痛みに効くのかというメカニズムを、専門である「わかりやすい翻訳(サイエンスコミュニケーション)」の視点で解説しました。
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データ収集を支える現場の対話: 実証実験に不可欠なデータ入力や経過観察において、参加者が負担を感じず、前向きに取り組めるような心理的安全性の高い場作りを徹底しました。
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多職種・多組織の連携支援: 自治体、医療専門家、民間企業が混在する実証現場において、それぞれの意図を汲み取り、共通のゴール(住民の健康改善)へ向かうための調整役を務めました。
考察:スマートシティの核は「人の変容」にある
加賀市での実証実験を通じて再確認したのは、どれほど優れた技術や理論があっても、最後にそれを実行するのは「人」であるということです。
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行動変容のスイッチ: 体操によって「痛みが和らいだ」という小さな成功体験を可視化することが、継続的なセルフケアへの最大の動機付けとなります。
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地域コミュニティの力: 研修を通じて生まれた参加者同士の励まし合いが、実証実験の精度と継続率を高める鍵となりました。
このような機会をくださった愛知医科大学の青野修一先生、神戸学院大学の下和宏先生、静岡大学の島尾青空さん、加賀市の皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。
まとめ:科学コミュニケーターが支援する「ヘルスケアの社会実装」
科学コミュニケーター 漆畑文哉は、最新の医学的知見やヘルスケア技術が、地域住民の「習慣」として根付くためのプロセスを設計・支援しています。
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健康教育・予防医療研修の企画: エビデンスに基づいたプログラムを、現場が受け入れやすい形に構成して提供します。
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実証実験の現場ファシリテーション: 技術者と住民の間に立ち、スムーズな実験運営と質の高いデータ収集をサポートします。
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地域課題解決型のワークショップ: 自治体や企業のプロジェクトにおいて、住民を巻き込んだ合意形成や意識啓発を推進します。
次世代のヘルスケア施策や、地域を巻き込んだ実証実験の展開をお考えの方は、ぜひ以下のお問い合わせよりご相談ください。