2021年7月4日(日)、神奈川工科大学で担当している教職科目の講義「理科教育法Ⅲ」の一環として、学生とともに神奈川県立生命の星・地球博物館を訪問しました。
地球の誕生から現在に至るまでの壮大な物語を、実物標本で体現するこの博物館。私は教育学を専門とする立場から、展示物がどのように来館者の認知を揺さぶり、学びに変えていくのか、その「展示の教育的機能」に焦点を当てて見学を行いました。

背景と課題:博物館における「学び」の質を問う
大学の授業としての今回の訪問では、単に展示を鑑賞するのではなく、博物館が教育機関としてどのような役割を果たしているのかをリサーチすることが目的でした。
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課題: 巨大な隕石や恐竜の骨格など、圧倒的な「実物」が持つ力を、いかにして一時的な感動から「科学的な理解」や「継続的な探究」へと繋げるか。
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狙い: 学習科学の知見に基づき、展示構成やキャプション(解説文)が、来館者の「足場かけ(スキャフォールディング)」としてどのように機能しているかを分析すること。
今回のアプローチ:理科教育×教育学による展示分析
博物館では、まず常設展示を見学したのち、動物・植物グループ主任学芸員の大西亘さんに博物館のバックヤードの収蔵庫を案内していただき、博物館の役割について学びました。
見学中、私は高校教師・科学教育者としての現場感と、修士課程で培った分析的視点を用いて、以下のポイントを考察しました。
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「実物」による認知の揺さぶり: 46億年の地球史を俯瞰する「地球を考える」展示。巨大な実物標本が並ぶ空間において、学習者がどのポイントで「驚き」から「問い(なぜ?)」へと移行するのか、その導線を観察。
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五感を活用したインターフェースの評価: 触れる標本や直感的な展示手法が、多職種連携やユニバーサルデザインの視点からいかに優れているかを、教育学的なアクセシビリティの観点から評価。
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大学教育としての接続: 今回の授業での学びを、将来の教材開発やワークショップ設計にどう活かせるか。特に、専門的な学術情報を一般の方に届ける「情報の翻訳」の好例として、博物館の展示手法を分析しました。
考察:社会教育の拠点としての博物館
神奈川県立生命の星・地球博物館での見学を通じて、博物館という空間が持つ「非日常的な学び」の可能性を再認識しました。
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成果(学びの深化): 高度な学術標本が、適切なコンテクスト(文脈)の中に配置されることで、専門家と市民が「知」を共有できる場となる。その設計思想に触れたことは、大きな収穫でした。
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活動への反映: 今回のフィールドワークで得た知見は、現在UFMYが手掛けている「問いを誘発するワークショップ」や、専門知の社会実装プロジェクトにおける展示・解説手法に直接反映させていきます。
学習指導要領理科編では、博物館との連携に関する説明はあるものの、博物館がそもそもどんな役割を担っているかが明記されていません。学生は、普段見ることのできない資料収集や調査研究といった博物館の一面を知ることができました。また、生命の星・地球博物館にとっても教職科目での学生の受け入れは今回が初めてだったと聞きました。
今後も学校教育と社会教育がWin-Winの関係で連携し、科学啓発やオープンサイエンスが盛り上がるよう尽力して参ります。
最後になりますが、コロナ禍でまんえん防止等特別措置の状況下にも関わらず、このような素晴らしい機会をくださった大西さんはじめ博物館スタッフの皆さまに、心より御礼申し上げます。
- 参照
- 神奈川県立生命の星・地球博物館
まとめ:提供する「インフォーマル・ラーニング」のデザイン
科学コミュニケーター 漆畑文哉は、博物館や科学館、あるいは企業展示などの「常設の学びの場」を、より教育的な価値の高いものへアップデートするサポートを行っています。
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展示・解説プログラムのコンサルティング: 教育学の理論に基づき、来館者の深い納得感を生む「問いかけ」の設計を支援します。
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フィールドワークの企画・コーディネート: 専門的な視点を持って現場を歩き、新たな価値や課題を言語化するリサーチを代行します。
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理科・環境教育コンテンツの共同開発: 博物館級の「実物」の価値を活かし、学校教育とも連携した魅力的な学習パッケージを制作します。
専門的なリサーチに基づいた教育設計や、博物館・展示施設の活用をお考えの方は、ぜひ以下のお問い合わせよりご相談ください。